IT活用コラム|社内ネットワーク

「オフィスのWi-Fiが遅い」の正体 中小企業が見直すべき社内ネットワーク設計の基本3点 ── 業務インフラを”気合い”で乗り切らない

Wi-Fi環境が実は、毎月どのくらいの社員の業務時間を失わせているか、ご存知ですか?「Web会議が途中で止まる」「クラウド会計の保存が遅い」「会議室の奥だけ電波が弱い」 ── こうした不調は単なる「イライラの種」ではなく、社員の生産性を蝕む経営課題です。

バッファローの2023年調査では、中小企業の72.7%が業務に家庭用Wi-Fiルーターを使っていると報告されています[1]。在宅勤務やクラウド利用が当たり前になった今、Wi-Fiは水道や電気と同じ「業務インフラ」です。

本記事では、ITに詳しくない方でも判断できる、社内ネットワーク見直しの基本3点を整理します。

用語メモ|Wi-Fi(無線LAN)とは? ケーブルを使わずPC・スマホ・複合機などをネットワークに接続する仕組み。電波で通信するため、置き場所・規格・同時接続台数が安定性を大きく左右します。

なぜ「遅い」「切れる」が起きるのか

不調の原因は3つに集約される

オフィスのWi-Fi不調は、ほぼ次の3つに集約されます[2]

  • 同時接続台数の超過:家庭用ルーターは想定接続台数が15〜20台程度の機種が多く、社員10名でもPC・スマホ・複合機・IP電話・ネットワークカメラ…と数えると簡単に超える
  • 電波干渉と障害物:隣接フロアのWi-Fi、電子レンジ、金属棚、コンクリート壁が電波を弱める
  • 旧規格ルーターの性能限界:Wi-Fi 4(802.11n)世代の機器を使い続けていると、通信が順番待ちになり全体が遅くなる

多いのは「ONUの隣にルーターを置きっぱなし」

特に多いのが、ルーターを通信会社のONUの隣に置いたままというパターン。ラックの中や床近くは、上方向にも横方向にも電波が届きにくい最悪の置き場所です。

用語メモ|ONUとは? 光回線終端装置(Optical Network Unit)の略。光ファイバーをLANケーブルに変換する箱で、通信会社が設置するもの。Wi-Fiルーターはこれの隣に置かれがちですが、電波の観点では理想ではありません。

改善の基本3点

ポイント1:Wi-Fi 6対応アクセスポイント ── 同時接続数が15台⇒100台超に対応

Wi-Fi 6(規格名 802.11ax)は2019年に登場した規格で、複数端末の同時通信(MU-MIMO)や特定端末への電波集中(ビームフォーミング)に対応しています[3]

家庭用ルーターとの大きな違いは「同時接続台数の上限」と「24時間365日稼働の耐久性」。業務用を選ぶなら、以下の2つから選べます。

  • 月額制サービス(NTT東日本「ギガらくWi-Fi」など):機器交換・故障対応・SSID追加までセット[4]。IT専任者がいない企業向け
  • 買い切り:I-O DATA、バッファロー法人モデル、NETGEAR Orbi Pro、Cisco Meraki Goなど。自社で管理したい企業向け
用語メモ|アクセスポイント(AP)とは? Wi-Fiの電波を実際に飛ばす機器。家庭用ルーターは「ルーター+アクセスポイント」が一体になっていますが、業務用は分離して必要数を増設できる構成が一般的です。

ポイント2:メッシュWi-Fi ── 隅から奥まで「均一な強さ」で電波をカバー

メッシュWi-Fiは、複数の親機を連携させて一つの大きな電波エリアを作る仕組みです。フロアの隅や奥の会議室まで均一な強さで電波を届けられます[5]

1台のハイパワー機より、中規模機を2〜3台メッシュで並べた方が、結果的に安定します。

ポイント3:3種類のSSID分離 ── セキュリティと安定性を両立

SSID(Wi-Fiの電波の名前)を3〜4本に分けるのが、セキュリティと安定性の両面で効果的です。

  • 業務用:社員PC・スマホのみ接続、社内ファイルサーバへアクセス可
  • ゲスト用:来客やセミナー参加者向け。社内ネットには入れずインターネットだけ
  • IoT用:複合機・防犯カメラ・スマート家電など。業務PCと分離して感染拡大を防ぐ

この仕組みはVLAN(タグVLAN)という機能で実現され、業務用アクセスポイントなら標準で備わっています[6]

用語メモ|VLANとは? Virtual LAN(仮想LAN)の略。1本の物理的なLANを複数の仮想ネットワークに切り分ける技術(IEEE 802.1Q で標準化)。SSIDごとに行き来できる範囲を変えることで、ゲストや複合機を社内ファイルサーバから隔離できます。

実践のコツとよくある失敗

導入前に「電波の見える化」を必ずやる

導入前に必ずやってほしいのが「電波の見える化」です。スマホアプリで現状の電波強度と隣接ネットワークの混雑状況を測れます。

  • Android:「Wi-Fi Analyzer」アプリ
  • iPhone:「AirPort Utility」(詳細モードを有効化)

これをやらずに機器だけ買い替えても、設置場所が悪ければ効果が出ません。

よくある失敗3つ

失敗①:ルーター1台で全フロアをカバーしようとして電波出力を最大にする

電波は強くしても遠くに届くわけではなく、反射や干渉が増えてかえって遅くなります。

失敗②:家庭用ルーターを業務用ハブのLAN端子につなぎWi-Fiだけ追加する

ルーターが二重(二重NAT)になりオンライン会議や一部クラウドサービスが不安定になります。アクセスポイントモード(ブリッジモード)に切り替えるか、業務用APを正しい構成で導入してください。

失敗③:ゲストWi-Fiのパスワードを社員と同じにする

来客が増えるとどこからでも社内に入れる状態になり、セキュリティ面で本末転倒です。


まとめ|Wi-Fiは”気合”ではなく”設計”で速くなる

Wi-Fiの遅さは「気合で我慢するもの」ではなく、業務効率と直結する経営課題です。

10名規模なら月額3,000〜10,000円程度の業務用Wi-Fiサービスで、Web会議の途切れも複合機のスキャン詰まりもまとめて解消できます。

今日から始められる確認は3つです。

  • Wi-Fi 6対応で、業務用に設計された機種か
  • メッシュ or 増設APで、広いフロアをカバーする構成になっているか
  • 来客用業務用のSSIDが分かれているか

1つでも「あれ?」となったら、それが今月の検討課題です。

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こんなお悩み、ありませんか?

  • Web会議が途切れる、クラウド保存が遅い ── 原因が特定できない
  • 事務所を移転・拡張したいが、Wi-Fiの設計をどう考えればいいかわからない
  • 家庭用ルーターからの卒業を検討しているが、製品選定で迷っている
  • 来客用Wi-Fiと業務用を分けたい・複合機やカメラを安全に運用したい

こうしたお悩みがあれば、まちのIT便利屋 合同会社みよし屋 までお気軽にご相談ください。現地での電波測定からメーカー選定、設置・運用までトータルでお手伝いします。

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REFERENCES|参考資料

  1. バッファロー「中小企業の72.7%が『家庭用Wi-Fiルーター』を業務利用していることが明らかに」(2023年3月公表)
    https://www.buffalo.jp/press/detail/20230323-01.html
  2. KDDI「オフィスのWi-Fiが遅い?今すぐ見直すべきポイントと解決策とは」
    https://biz.kddi.com/content/column/smb/help-connect-wifi/
  3. Wi-Fi Alliance「Wi-Fi 6 (IEEE 802.11ax) – Wi-Fi CERTIFIED 6」(公式技術概要)
    https://www.wi-fi.org/discover-wi-fi/wi-fi-certified-6
  4. NTT東日本「ギガらくWi-Fi|オフィス・店舗向けの業務用Wi-Fi」(公式サービスサイト)
    https://business.ntt-east.co.jp/service/gigarakuwifi/
  5. Cisco Meraki Go「小規模オフィス・店舗のためのWi-Fi構築ガイド:Wi-Fi メッシュ」
    https://www.cisco.com/c/m/ja_jp/meraki-go/technical-guide/wi-fi-mesh.html
  6. IEEE「IEEE 802.1Q-2022 Bridges and Bridged Networks」(VLANタグの標準規格)
    https://standards.ieee.org/ieee/802.1Q/10323/